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本で読んで、タイトルの主人公2人の悲しい恋の物語ということは知っていましたので、そんなことを思い出しながらCDプレーヤーで前奏曲をかけると、のっけから美しい中にもどうしようもなく悲しい結末を暗示するかのような不気味で、断絶された音が混じっていて、そんな不思議な魅力に一瞬で取りつかれてしまいました。
その不気味に感じた原因は、前奏曲の冒頭から登場する有名な「トリスタン和音」というものの効果で、前奏曲のみならず、その後も何度もこのモティーフが出てきます。

教科書的に言えば、この「トリスタンとイゾルデ」で、それまでの調性音楽を、半音階進行の多用によって崩壊寸前にまで追いこみ、「無調」の世界へ足を一歩踏み出すことに成功しました。こうした意味で西洋音楽史全体にとっても大きな意味を持つ作品です。
今にして思うとラッキーだったのは、ジャケ買いなのに、実はこのCDは名盤とされているようで、指揮者のヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮の1954年の録音。歌手もスターぞろい。微妙にテンポが変わりながらも自由自在にオーケストラの音色を操り、えも言われぬ美しいピアニッシモ、そしてクライマックスでは大きな波のようなダイナミックさで僕らを感動の極致に至らしめてくれます。
コンサートでは2008年のちょうどサンクスギビングの頃、友人を訪ねてニューヨークに行った時に、メトロポリタン歌劇場で観ました。ちょうどダニエル・バレンボイムの指揮による本作のオープニング日で、観客にはピアニストの内田光子や、今は亡きブルース・ワッサースタインなど多くの著名人が来ているようでした。正直その日は時差ボケで途中ウトウトしてしまいましたが、切なくも美しい、素晴らしい公演でした。
特に、第1幕、アイルランドからコーンウォールへ向かう船上での出来事。トリスタンがイゾルデの許嫁を倒して、トリスタンの王様であるマルケ王の妻として持ち帰る道中に、イゾルデはトリスタンが婚約者を殺したことを攻め立て、トリスタンもイゾルデに申し訳ないとイゾルデに剣を差し出すも、イゾルデは手を加えることができずにいました。そしてトリスタンはイゾルデの女中が作った”毒薬”(実は媚薬だった)を死を決して飲み、イゾルデもそれを奪い取って飲んだ時にも流れるトリスタン和音には身震いがしたほどでした。
また、この公演と同じ指揮&演出でDVDもあり、購入。

合計4時間にも及ぶ長大なオペラ(楽劇)ですが、コンサートなどでは前奏曲とエンディングの「愛の死」はそれだけで演奏される機会も結構あるので、その部分だけでもオススメです。
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