10年ほど前の話ですが、当時勤めていた会社を退社し海外に来てはみたものの、日本にいる友人は嫌でも頑張って仕事しているんだろうなぁ、それに比べて僕はこんなとこで何やってるんだろう、、、と意気消沈していた時に、キャンパスの学生が配っていた1枚のパンフレットを手にしたことから、大げさではなく少なからず僕の人生は変わりました。 

毎週水曜日のランチタイムにキャンパス内の音楽ホールでコンサートをやっているらしく、今日はシューベルトのピアノソナタで、演奏者は音楽学部の学生とのこと。
「クラシックかぁ、全然分からないけど暇だし、お腹も空いてないし、無料なら行ってみようか」と軽く思い、聴きにいくことにしました。
ホールに着けば既に第1楽章が始まっていました。しょうがないので終わるまでドアのところで立って待つことにしました。そして防音のドア越しに僅かに聴こえてくる音色にじっと耳を傾けました。第1楽章が終わると係員がドアを開けて中に入るよう誘導してくれ、後方の1つ空いていた席に腰をおろし続きを聴きました。
初めて聴いた曲だったし、40分を超える長いピアノ曲でしたが、あっという間の出来事に感じられました。呆然としたまま会場をあとにしようとした時、まるで啓示を受けたかのように”クラシック音楽を聴きたい”という強い衝動に駆られ、一目散に近くの中古CD屋に行きました。
クラシックコーナーにいた物静かな黒人の店員に拙い英語で「クラシックは全くの初心者だが、本気でいろいろ聴いてみたい。あなたにとって、これはと思えるCDを幾つか紹介してほしい」とお願いして、1時間ほどかけて丁寧な解説を受けながら彼が勧めるCDを10枚ほど購入しました。(もちろんその時はわからないけど、今思うと本当に素晴らしい彼のチョイスでした。)
それから今まで聴いてこなかった年月の空白を埋めるべく貪るようにCDでクラシックを聴き、ジャケットに記載されている解説も辞書を片手に読み、コンサートもほぼ毎週通い、音楽学部校舎の図書館でいろいろな文献を読み漁ったりもしました。
今となっては懐かしい思い出だし、笑っちゃうくらいのハマりっぷりですよね。
ちなみに、CDはこちらです。
「シューベルト : ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 」 内田光子

ながーい曲です。例えばベートーヴェンのように主題と方向性がはっきりとしていなくて、何度も繰り返しがあったり、転調したり、ある時は急に立ち止まってみたり、いったい何がしたいんだろう、どこに行きたいんだろう、って思ったりもしますが、僕にとってはかけがえのない曲です。
複雑な挫折感、孤独感、行き場のない澱み、この曲に当時の自分がすべて投影されている感じがしました。
日本に帰ってきてからも、この曲が演奏されるとあってはコンサートに足を運びました。特に印象的だったのは、2005年11月19日、31歳でこの世を去ったシューベルトの177回目の命日に行われたコンサートです。ピアニストは田部京子という女性でした。優しく、とっても親密な演奏でした。
また、アンコールで至上のアヴェマリアを演奏してくれたことは、いまでは生涯忘れられない思い出のひとつです。
1 件のコメント:
もっさんにとってクラシックは単なる音楽ではなく、様々な思い出や感情と重なり合って、今のもっさんの一部となっているんだね。すごい興味深かったです。
たまには自分が愛してきた音楽を振り返ってみるのもいいかもね。思い出の洪水が押し寄せてきそうだけれど。。。。なんか彦麻呂みたいなコメント(笑)
これからもアップ楽しみにしています。
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